【40代USCPA目指せ税理士】法人税法勉強メモ6(普通償却)

税理士
1.法人税における減価償却とその体系
法人税における3つの減価償却
普通償却…会社法の「相当の償却」に相当するもので、適正な期間損益計算の手続きとして定められている。
特殊償却…資産の特性、個々の企業の操業度を考慮した償却限度額の計算を定めている。
特別償却…中小企業の保護育成等の各種政策的観点から「租税特別措置法」に優遇規定として定められている。
法人税における減価償却の意義
企業会計による減価償却は、適正期間損益算定上の費用配分の手続きをいう。一方、法人税においても減価償却は期間損益算定上の手続きであることは同じだが、法人の内部計算である減価償却については、法人の意思表示としての損金経理を求めるとともに、償却限度額を定めるなど必要な規定を設け課税の公平を図っている。
⇨法人税法上の減価償却は課税の公平に重点が置かれる。つまり、取得減価、償却方法、法定耐用年数、償却率、残存価額は全て法令で定められており、法人が任意で見積もることは認められていない。
減価償却資産の意義
法人税法上、減価償却の対象となる資産を減価償却資産という。具体的には、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち一定のもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く)で償却をすべきものと定められています。
減価償却資産の範囲
有形減価償却資産…①建物 ②構築物 ③機械及び装置 ④船舶 ⑤車両及び運搬具 ⑥工具 ⑦器具及び備品
無形減価償却資産…①鉱業権 ②特許権 ③営業権 ④ソフトウェアなど
その他(生物等)…①牛馬等 ②果樹等
2.償却費の取り扱い
各事業年度終了時において有する減価償却資産につきその償却費としてその事業年度の損金の額に算入する金額は、その事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度額に達するまでの金額とする。
・償却超過額が生じる場合
会社計上償却費 200円
償却限度額 150円
200 – 150 = 50円(加算留保)
・償却不足が生じる場合
会社計上償却費 280円
償却限度額 300円
280 – 300 = △50円→0(切捨)
計算の型
(1)償却限度額
(2)償却超過額
  会社計上償却費 – 償却限度額 ➡︎ ①+の場合 減価償却超過額(加算留保)
                  ②△の場合 減価償却不足額(切捨て)
3.償却方法の選定と手続き
減価償却資産について選定できる主な償却資産は、その取得日の区分に応じて、次のように定められている。
・建物
H10年3月31日以前 旧定額法or旧定率法
H19年3月31日以前 旧定額法
H19年4月1日以後 定額法
・建物付属設備及び構築物
H19年3月31日以前 旧定額法or旧定率法
H19年4月1日以後 定額法or250%定率法
H24年4月1日以後 定額法or200%定率法
H28年4月1日以後 定額法
・上記以外の有形減価償却資産
H19年3月31日以前 旧定額法or旧定率法
H19年4月1日以後 定額法or250%定率法
H24年4月1日以後 定額法or200%定率法
・無形減価償却資産
H19年3月31日以前 旧定額法
H19年4月1日以後 定額法
法定償却方法
償却方法を選択できる資産について、償却方法を選択しなかった場合の法定償却方法は次の通り
⇨旧定率法か定率法と覚える。選択できるものは全て定額か定率の二択である。後は上記の取得年月日に従い旧か新を選べばよい。償却方法は何度も問題にあたって慣れる。
4.減価償却資産の取得価額
原則的な取得価額
・取得価額に算入すべき費用
購入費用…引取運賃、運送保険料、購入手数料、関税 等
事業共用費…改良費、据付費、試運転費 等
・取得価額に算入しないことができる費用
租税公課…不動産取得税、自動車取得税、登録免許税 等
その他…当期費用、登録費用、借入利子等
⇨ただし、確定決算上、取得価額に含めない処理を行った場合に限る。これらの費用を経理処理上で取得価額に含めておきながら、別表四上で減算して損金の額に算入することは認められていない。
⇨関税以外の租税公課と覚える
5.償却限度額の計算
・H19年3月31日以前に取得された減価償却資産
旧定額法
有形減価償却資産…税務上の取得価額x0.9x旧定額法償却率
無形減価償却資産…税務上の取得価額x旧定額法償却率
旧定率法
税務上の期首帳簿価額x旧定率法償却率
⇨期首帳簿価額は、税務上の金額であり、繰越償却超過額がある場合には会計上の期首帳簿価額に繰越償却超過額を加算した金額となる。
・H19年4月1日以前に取得された減価償却資産
定額法…税務上の取得価額x定額法償却率
定率法…
調整前償却額≧償却保証額 税務上の期首帳簿価額x定率法償却率(通常通り)
調整前償却額<償却保証額 改定取得価額x改定償却率
⇨この計算は拾ってくる数字が多くなるのでミスも多くなる。定率法の場合は耐用年数終了時点で償却が終了するようには規定されていないため、償却限度額の計算を切り替えて耐用年数で償却が終了するように調整を行なっている。勝手なイメージだと改定償却率は定額法償却率のことだろう。改定取得価額とは調整前償却額が償却保証額に最初に満たなくなった事業年度の税務上の期首帳簿価額をいう。
計算の型
(1)償却限度額
 ①調整前償却額
  税務上の期首帳簿価額x定率法償却率
 ②償却保証額
  税務上の取得価額x保証率
 ③償却限度額
  ①≧②の場合➡︎①の金額
  
  ①<②の場合➡︎改定取得価額x改定償却率
(2)償却超過額
  会社計上の償却費-償却限度額 ➡︎①+の場合 減価償却超過額(加算留保)
                  ②△の場合 減価償却不足額(切捨)
期中共用資産
定額法又は定率法で計算した通常の償却限度額 x 事業共用日から当期末までの日数 / 当期の日数
⇨事業共用日からであって取得日からではないので注意。定率法で償却限度額を計算する場合、償却保証額と比較する調整前償却額(通常の償却限度額)は、月割計算をする前の金額となる。つまり、比較と判定が終わった金額を月割りする。
グルーピング
償却限度額は、原則として個々の資産ごとに計算するが、種類等の区分耐用年数及び償却方法の3つの区分が同一である資産については、1つのグループとして、その償却限度額をまとめて計算する。
種類等の区分
機械装置…設備の種類が同一であるかどうか
機械装置以外…構造・用途・細目の区分が同一であるかどうか
・耐用年数
償却限度の基礎となる耐用年数が同一であるかどうか
・償却方法
旧定率法旧定額法250%定率法200%定率法定額法等の区分が同一かどうか
250%定率法と200%定率法は同一の償却方法とは判定されない。
グルーピングを行うことにより、同一グループ内の資産について生じている償却超過額と償却不足額は通算されることになります。
                    会社償却費    償却限度額    償却超過(不足額)
備品A     800,000円    600,000円    200,000円
備品B           500,000円    650,000円   △150,000円
合算           1,300,000円   1,250,000円      50,000円
⇨個別に償却した場合、備品Aの200,000円が償却超過額となるが合算した場合には△150,000円が引かれ50,000円となり納税者にとっては有利な規定となる。
6.償却可能限度額
H19年3月31日以前に取得した有形固定資産については、残存価額は取得価額の10%とされているが、償却は一旦、取得価額の95%相当額まですることが認められている。
このように「どこまで償却することができるかという金額」を償却可能限度額という。
計算の型
(1)償却限度額
 ①通常の償却限度額
 ②期首帳簿価額 – 取得価額x5%
 ③①と②の少ない方
(2)償却超過額
 会社計上償却費-(1)
H19年3月31日以前に取得した有形減価償却資産のうち、取得価額の95%相当額まで償却した資産について、更にその後も事業の用に供している限り、取得価額の95%相当額まで償却した翌事業年度以後において、残存簿価1円まで償却することが認められる。
計算の型
(1)償却限度額
 ①判定
  
  期首簿価価額 ≦ 取得価額 x 5% ∴適用あり
 ②(取得価額 x 5% -1円)x 当期の月数/60
(2)償却超過額
 会社計上償却費 – (1)
H19年4月1日以後に取得した有形減価償却資産については、H19年3月31日以前に取得した有形減価償却資産の取り扱いとは異なり、償却累計額の95%相当額に達しているか否かは関係なく、残存簿価1円までの償却が認められている
計算の型
(1)償却限度額
 ①通常の償却限度額
 ②期首帳簿価額 – 1円
 ③①と②のいずれか少ない方
(2)償却超過額
 会社計上償却費 -(1)
7.繰越償却超過額
繰越償却超過額(前期以前に生じた償却超過額)は、当期に償却費として損金経理をした金額に含まれる
⇨意味が分かりづからいが、要は当期の償却限度額を計算する際に帳簿価額に前期以前に生じた繰越償却超過額を加えるということ。
    会社計上償却費    償却限度額
前期      300円      280円
当期      250円      260円
・前期
300円 – 280円 = 20円(償却超過額)→別表四加算
・当期
250円 – 260円 = △10円
10円<20円(前期繰越超過額)
∴10円(認容)
計算の型
(1)償却限度額
 ①定率法(旧定率法)
 (会社計上の期首帳簿価額+繰越償却超過額)x 償却率
 
 ②定額法(旧定額法)
 税務上の取得価額(x0.9) x償却率
(2)償却超過額
 会社計上償却費-償却限度額
 
 = +の場合 減価償却超過額(加算留保)
 = △の場合 償却不足額 or 繰越限度超過額のいずれか少ない方 減価償却超過額認容(減算留保)
8.原価外処理した付随費用
償却費として損金経理をした金額は、基本的に法人が減価償却費として費用に計上した金額を指すが、実務上の要請から償却費以外の勘定科目で損金経理をしたものであっても、特に課税上弊害がないと認められる原価外処理した付随費用は償却費として損金経理をした金額に含めることが認められている。
⇨上記文章が分かりづらいが、原価外処理した付随費用は税務上の取得原価に含め、償却限度額及び償却超過額の計算上も含める。
計算の型
(1)償却限度額
 (会社計上取得価額+原価外処理した付随費用)x 償却率 x 月数/12
(2)償却超過額
 (会社計上償却費+原価外処理した付随費用)-(1)
理論 減価償却資産の償却費の計算
1.減価償却資産の意義(法2二十三)
棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち一定のもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)で償却すべきものをいう。
2.償却費の取り扱い
(1)内容(法31①④)⭐︎
内国法人の各事業年度終了時において有する減価償却資産につきその償却費としてその事業年度の損金の額に算入する金額は、その事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度額に達するまでの金額とする。
(注)償却費として損金経理をした金額には、繰越償却超過額を含む。
(2)帳簿価額(令62)⭐︎
償却超過額がある場合には、その減価償却資産の帳簿価額はその償却超過額の減額されなかったものとみなす。
(3)明細書の添付
償却費として損金経理をした金額がある場合には、償却限度額その他償却費に関する明細書を確定申告書に添付しなければならない。

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