今回は流動負債についての学習です。会計処理は容易なものが多いですが、最後の偶発債務は重要なのでしっかりと押さえましょう。記事内容は個人的なメモに過ぎませんのであくまでも参考としてご覧ください。この記事を参考されたことによる結果について、いかなる責任も負いかねますので何卒よろしくお願いいたします。
目次
流動負債 ★★★★
流動負債の定義
流動負債とは1年以内に支払期限の到来する債務である。
代表例
Short-term debt 短期借入金
Accounts payable 買掛金
Accrued expenses 未払費用
Salaries payable 未払給与
Dividends payable 未払配当金
Current potion of long term debt 1年以内返済の長期借入金
Taxes payable 未払税金
代表的流動負債の会計処理
ここでは買掛金、未払費用などの説明は割愛し、保護預かり負債、短期借入金の借換え、商品券、予約申込み、製品保証、有給休暇に焦点を当てたい。
- 保護預かり負債(escrow accounts liability)
米国では不動産の売買等において、契約が成立するまでの間、中立的な立場に立つ第三者(escrow)が売買代金を一時的に預かることがある。escrowが預かったお金は将来的に第三者へ支払うべきものであるため、負債として計上する。
現金預かり時
D) Cash xxx C) Escrow liability xxx
現金支払い時
D) Escrow liability xxx C) Cash xxx
- 短期借入金の借換え
通常、1年以内に返済期限が到来する借入金は短期借入金として流動負債に計上する。しかし、財務諸表の発行前に長期借入金への借換えを行った場合には固定負債として計上する。借換えにより、1年以内にcash outすることがなくなったため。
ただし、固定負債として計上するためには下記2つの条件を満たす必要がある。
借換の意思のあること
借換を行う能力があること
- 商品券
企業は商品券を販売した時点で前受収益(unearned revenue)として計上する。これは将来に商品を引き渡す義務を負ったことを意味している。また、商品券の使用期限が切れた場合には、お金は貰ったにも関わらず、商品を引き渡す義務がなくなった=儲かったということになります。従って、この場合には収入を認識します。
商品券を販売したとき
D) Cash xxx C) Unearned revenue xxx
商品券が使用されたとき
D) Unearned revenue xxx C) Sales revenue xxx
D) Cost of sales xxx C) Inventory xxx
商品券の有効期限が切れたとき
D) Unearned revenue xxx C) Sales revenue xxx
- 予約申し込み
昨今、流行っている「サブスク」のように月額で定額いくらと決まっているサービスの代金を一括で前受をした場合には、サービスを提供した時点で収入を計上することに注意する。
例えば、x1年にx2〜x3年の2年間の本の購読料を前受けしたとする。購読料は年間1,000ドルとした場合、下記の通り会計処理を行う。
x1年 代金受取時
D) Cash 2,000 C) Unearned revenue 2,000
x2年 サービス提供時
D) Unearned revenue 1,000 C) Sales revenue 1,000
x3年 サービス提供時
D) Unearned revenue 1,000 C) Sales revenue 1,000
- 製品保証
企業は販売した製品の品質について、一定期間購入者対して保証(warranty)を行うことがある。不具合の修理などが発生すれば企業には支出が発生することになるが、問題は費用の計上時期である。
結論としては、製品を販売した時点で費用を認識する。これは費用収益対応の原則に則った処理である。修理費用を支出した時点ではないことに注意する。
販売時
D) Cash xxx C) Sales revenue xxx
D) Warranty expense xxx C) Warranty liability xxx
修理費など支出時
D) Warranty liability xxx C) Cash xxx
- 有給休暇
給与の支給を伴う休暇である有給休暇の会計処理では、実際に消化された年度では無く、有給休暇を付与した時に会計処理を行う。
偶発事象
偶発事象は重要な論点です。後発事象と並んでよく出題されます。私の受験した本試験でも問われました。発生の可能性の場合に応じて会計処理のパターンを学習しましょう。
偶発事象
将来に利益や損失を発生させ得る不確実性を孕んだ現在の状況である。噛み砕いて言うと、将来に損失や利益が見込まれる原因が当期にあるのであれば、当期の財務諸表に反映しようとする保守主義や費用収益対応の原則に基づく考え方である。
例えば、何らかの違法行為をx1年に行い、その判決がx2年に出るとする。判決が確実に有罪で損害賠償金も$10,000と見込まれるのであれば、x1年に計上するべきである。
x1年
D) Loss from damage claim 10,000 C) Estimated liability for damages 10,000
x2年
D) Estimated liability for damages 10,000 C) Cash 10,000
偶発事象の認識及び開示
損失発生の可能性をその程度に応じて次の3つに分類する。
- 発生の可能性が大きい場合(probable)
- 合理的な見積もりが可能な場合
損失を前倒しして計上すると共に、負債として計上する。特定の金額を見積もれず、一定の範囲しか把握できない場合には最低金額を損失として計上する。ただし、範囲の中により良い見積もり額がある場合はその金額で損失を計上する
範囲:10,000 〜 20,000
基本は最低金額の10,000で計上。
ただし、仮に15,000がより良い見積もり額である場合は15,000で計上する。 - 合理的な見積もりが不可能な場合
発生の可能性が大きくても開示のみ行う。
- 発生の可能性が中程度の場合(reasonably possible)
損失は計上せず開示のみ行う。
- 発生の可能性が小さい場合(remote)
損失の計上も開示の必要もない。ただし、債務保証契約など一部の債務は開示が必要
- 偶発利得
いかなる場合も偶発利得は財務諸表上に計上してはならない。
本日は以上です。
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