【40代USCPA目指せ税理士】法人税法勉強メモ10(寄附金の損金不算入)

1.制度の趣旨の基本的な考え方
寄附金の支出には事業関連性のないものや事業関連性が不明確なものが含まれており、そのまま損金算入を認めるわけにはいかない。そこで法人税法では損金算入限度額を定め、形式的にその損金算入限度額までの支出について事業関連部分として損金算入を認め、損金算入限度額を超える部分については、事業関連性のない部分と考えて損金不算入とすることで課税の公平性を保っている。
損金不算入額の計算
計算の型
(1)支出寄附金
 ①指定寄附金等
 ②特定公益増進法人等
 ③その他寄附金
 ④合計 ①+②+③
(2)損金算入限度額
 ①一般寄附金の損金算入限度額
 ②特別損金算入限度額
(3)損金不算入額
 (1)④ – (1)① -(※) – (2)① 寄附金の損金算入限度額(仮計の下・加算社外流出)
 ※(1)②と(2)②のいずれか少ない方
支出寄附金の区分
指定寄附金の額‥全額が損金の額に算入される
特定公益増進法人法人等に対する寄附金‥一般寄附金の損金算入限度額とは別枠の特別損金算入限度額が認められている
その他の寄附金‥一般寄附金の損金算入限度額の範囲内で、損金の額に算入される
2.損金算入限度額の計算
(1)一般寄附金の損金算入限度額
損金算入限度額は、資本基準額(法人の資本規模から見た支出水準)と所得基準額(法人の支払能力から見た支出水準)の合計の4分の1相当額とされている。
①資本基準額
期末資本金の額及び資本準備金の額の合計額 x 当期の日数 / 12 x 2.5 /1,000
②所得基準額
当期の課税所得(別表四仮計の金額+支出寄附金の額)x 2.5 /100
③(①+②)x 1/4
⇨資本基準額の計算においては当期末現在の資本金の額及び資本金準備額の合計額を使用することに注意。所得基準額においては支出寄附金の額を加算し忘れないこと。最後、1/4を乗じ忘れない。
(2)特別損金算入限度額
特定公益増進法人等に対する寄附金に対して一般寄附金の損金算入限度額とは別枠で適用される限度額。特別損金算入限度額も資本基準額と所得基準額を基に求めるが、支出内容が公益性の高いものであることから、一般寄附金の損金算入限度額と比較して拡大された限度額が認められている。
①資本基準額
期末資本金の額及び資本準備金の額の合計額 x 当期の日数 / 12 x 3.75 /1,000
②所得基準額
当期の課税所得(別表四仮計の金額+支出寄附金の額)x 6.25 /100
③(①+②)x 1/2
3.寄附金の額とは
寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝費、見本品費、交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものは除く。)をした場合のその金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与時の価額又はその経済的な利益のその供与時の価額による。
・金銭の贈与
当社は当期において、近隣の神社のお祭りに際して現金100,000円を寄付している。
会社の仕訳
(寄附金)100,000円 (現金預金)100,000円
税務上の仕訳
(寄附金)100,000円 (現金預金)100,000円
⇨金銭による贈与(寄付)をした場合には、その贈与した金銭の額が寄附金の額となる。この場合、会社の仕訳と税務上の仕訳は一致しているため、損益の認識に関する特別な税務調整は不要。
・資産の贈与
当社は当期において、当社が所有する土地(帳簿価額10,000,000円、時価30,000,000円)をA社に対して贈与している。
会社の仕訳
(寄附金)10,000,000円 (土地)10,000,000円
税務上の仕訳
(1)土地を時価で譲渡したものと考える
(未収金)30,000,000円 (土地譲渡収入)30,000,000円➡︎益金の額
(土地譲渡原価)10,000,000円➡︎損金の額 (土地)10,000,000円
(2)実際は贈与であり、譲渡対価の回収意思はないため、未収金を寄附金に振り替える
(寄附金)30,000,000円➡︎贈与した資産の時価 (未収金)30,000,000円
⇨資産を贈与した場合には、その贈与した資産の贈与時の時価が寄附金の額となる。この場合、会社が費用計上した金額と税務上の損金の額(土地譲渡収入と寄附金を相殺すると、土地譲渡原価10,000が残る)は同額となることから、損益の認識に関する特別な税務調整をする必要はない。
・経済的な利益の無償供与
当社は当期において、現金30,000,000円をB社に対して無利息で貸し付けている。なお、通常収受すべき利息の額は900,000円である。
会社の仕訳
(貸付金)30,000,000円 (現金預金)30,000,000円
税務上の仕訳
(1)通常収受すべき利息の額(時価)で貸付けたと考える
(貸付金)30,000,000円 (現金預金)30,000,000円
(未収金)     900,000円 (受取利息)       900,000円
(2)実際は無利息貸付であり、利息の回収意思がないため、未収金を寄附金に振り替える。
(寄附金)    900,000円 (未収金)    900,000円
⇨経済的な利益の無償提供をした場合には、その経済的な利益の供与時の時価(通常収受すべき利息の額)が寄附金の額になる。会社はこの費用を認識しないが、税務においても益金の額(受取利息)と損金の額(寄附金)が同額となることから、損益の認識に関する特別な税務調整をする必要はない。
・低額譲渡等の場合の寄附金の額
内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額がその資産のその譲渡時の価額又はその経済的な利益のその供与時の価額に比して低いときは、その対価の額とその価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、寄附金の額に含まれる。
当社は当期において、当社が所有する土地(帳簿価額10,000,000円、時価30,000,000円)を15,000,000円でC社に対して譲渡している。
会社の仕訳
(現金預金)15,000,000円 (土地)10,000,000円
               (土地譲渡益)5,000,000円
税務上の仕訳
(1)土地を時価で譲渡したものと考える
(現金預金)15,000,000円 (土地譲渡収入)30,000,000円
(未収金)   15,000,000円
(土地譲渡原価)10,000,000円 (土地)10,000,000円
(2)実際は贈与であり、譲渡対価の回収意思はないため、未収金を寄附金に振り替える。
(寄附金)15,000,000円 ➡︎時価と対価の差額 (未収金)15,000,000円
⇨資産を低額譲渡した場合には、その譲渡資産の時価と対価の額との差額が寄附金の額となる。この場合、会社が計上した土地譲渡益の額と、税務上の益金の額(土地譲渡収入)と損金の額(土地譲渡原価と寄附金)との差額は同額となることから、損益の認識に関する特別な税務調整をする必要はない。
4.支出寄附金の区分
・指定寄附金等の具体例
指定寄附金等とは、国又は地方公共団体に対する寄附金及び財務大臣の指定した寄附金(指定寄附金)をいう。
国等に対する寄附金
①国又は地方公共団体に対する寄附金
国公立学校の施設の建設等の目的を持って設立された後援会等に対する寄附金でその施設が国等に帰属するもの
日本赤十字社等に対して拠出した義援金義援金配分委員会等に対して拠出されることが明らかなもの
指定寄附金等
日本学生支援機構に対する寄附金で学資貸与資金に充てるためのもの
各都道府県共同募金会に対する寄附金で財務大臣の承認を受けたもの
中央共同募金会に対する寄附金で社会福祉事業又は更生保護事業に充てるためのもの
日本赤十字社に対する寄附金で財務大臣の承認を受けたもの
・特定公益増進法人等に対する寄附金
特定公共増進法人等に対する寄附金とは、特定公共増進法人又は認定非営利活動法人に対する寄附金等をいう。
指定寄附金等ほどの緊急性はないが、公益性が比較的高いと認められる法人に対するもの。
(1)日本学生支援機構に対する寄附金で経常経費に充てるためのもの
(2)理化学研究所に対する寄附金
(3)自動車安全運転センターに対する寄附金
(4)日本司法支援センターに対する寄附金
(5)日本赤十字社に対する寄附金で通常経費に充てるためのもの
(6)社会福祉法人に対する寄附金
(7)公益社団法人に対する寄附金
(8)公益財団法人に対する寄附金
(9)認定特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭の額
(10)認定特定非営利活動法人に対する寄附金
・その他の寄附金
(1)政治団体(政党)に対する寄附金
(2)宗教法人に対する寄附金
(3)日本中央競馬会に対する寄附金
(4)日本下水道事業団に対する寄附金
(5)日本商工会議所等に対する寄附金
(6)町内会に対する寄附金
5.寄附金の計上時期
寄附金の損金算入額の計算の対象となる寄附金の認識は、現実の支払いがあった時点で行われる。
未払経理(手形払い)の場合
寄附金については、寄付契約(寄付の申し込み)をした段階で未払金として経理した場合であっても、寄附金の支出は現実の支払いをいうため、その経理をした事業年度ではなく、その現実の支払いをした事業年度において認識する。
⇨手形での支払いの場合でも手形が期日に決済された時点で認識することになる。
仮払経理の場合
寄附金について、仮払金として経理した場合には、会社の経理処理上は費用とされていないが、税務上は既に現実の支払いがあるため、その現実の支払いがあった事業年度に認識することになる。

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