【40代USCPA目指せ税理士】法人税法勉強メモ17(給与)

税理士
1.給与とは
法人税法における給与には、一般的に給与とされる役員報酬・給料・賞与・退職金などとして支給されるもの以外にも、債務の免除による利益その他の経済的利益が含まれる。実質的に従業員に対して給与を支給したのと同様の経済的効果があるものは、給与の範囲に含めて取り扱うことにより課税の公平を図っている。
経済的な利益の額
・法人の資産の贈与➡︎資産の価額
・法人の資産の低額譲渡➡︎資産の価額 – 対価の額
・役員等の資産の高価購入➡︎買取価額 – 資産の価額
・役員等に対する債権の免除額➡︎免除等した債権の額
・役員等の債務の無償引受➡︎引き受けた債務の額
・居住用資産の無償又は低額貸付➡︎通常の賃貸料 – 実際徴収額
・金銭の無利息又は低利貸付け➡︎通常の利息の額 – 実際徴収額
・交際費等の名義で支給した金額で、法人の業務のために使用したことが明らかでないもの➡︎その支給した金額
・役員等の個人的費用の負担➡︎その費用の額
⇨経済的な利益であっても、明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの及び病気見舞い、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるものは、給与とされる経済的な利益の範囲から除かれる。役員や使用人に係る罰金等を当社が負担した場合、それが業務外で生じたものは給与として取り扱う(業務の遂行上生じたものは損金経理罰金等)。
2.役員給与の取り扱い
法人が支出する給与は、費用の額として損金の額に算入されるのが原則である。しかし、役員給与に関しては、その給与の決定に役員自身が関与する等の理由から損金算入に制限が設けられている。
法人が支給する役員給与については、その給与の決定に役員自身が関与することなどから、お手盛り的な支給となりやすく、安易に損金算入を認めることは、課税の公平の観点から問題がある。このような状況下、法人税法では、役員給与の支給の恣意性を排除し、職務執行の対価として相当とされる範囲内で損金の算入を認めている。
以下のうち、適正分が損金算入され、過大分は損金不算入となる。
・役員報酬≒定期同額給与
・役員賞与≒事前確定届出給与
・役員退職金≒役員退職給与
役員給与の損金不算入
・隠蔽又は仮装経理の場合
・損金不算入給与
内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人兼務役員に対する使用人分給与及び上記の適用があるものを除く)のうち次のいずれにも該当しないものの額は、各事業年度の損金の額に算入されない。
定期同額給与
⇨定期給与(その支給時期が1月以下の一定期間ことである給与をいう)でその事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの
事前確定届出給与
⇨役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないものをいう。原則として納税地の所轄税務署長に届出をしているものに限られる
業績連動給与で一定の要件を満たすもの
所謂、業績連動型報酬。
・過大役員給与の損金不算入
役員に対して支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額は、各事業年度の損金の額に算入されない。
計算の型
(1)損金不算入給与
①A氏 
②B氏
③合計
①+②
(2)過大役員給与
①退職給与
②①以外の給与
③合計
①+②
(3)(1)+(2)➡︎役員給与の損金不算入額(加算社外流出)
3.定期同額給与
定期同額給与とは、定期給与(その支給時期が1月以下の一定期間ごとである給与をいう)でその事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいう。通常は毎月支給される月額報酬のことを指す
⇨継続的に供与される経済的な利益のうち、その額が毎月一定であるものは、定期同額給与に含まれる。非常勤役員などに対し年棒又は事業年度の期間棒を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、例えその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定される者であっても、月以下の期間を単位として支給されるものではないことから、定期同額給与には該当しない。
定額給与の改定
以下の3つの場合においてのみ認められる
通常改定(期首から3月以内の改定)
期首                        期末
     111 222 222 222
⇨改定前後のそれぞれの期間中、同額を支給する場合には定期同額給与として取り扱う、株主総会を想定した改定内容となっている。
臨時改定事由による改定
役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされたこれら役員に係る定期同額給与の額の改定(通常改定を除く)。
期首                         期末
     111 111 222 222
⇨他の役員の新社長への昇格、合併等により役員の職制上の地位は変わらないが、その職務内容が大幅に変更されるなどが該当する。
業績悪化改定事由による改定
経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた定期給与の額の改定(減額した改定に限り、通常改定及び臨時改定事由による改定を除く)
期首                         期末
     222 222 111 111
⇨この事由による場合にはただ単に業績が悪化しただけではなく、第三者である利害関係者(債権者、取引先等)
との関係上、止むを得ない場合に限る。
2.事前確定届出給与
役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金額又は確定した数の株式等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないものをいう。なお、原則として納税地の所轄税務署長に届出をしているものに限られる。通常、役員賞与を指すが、損金の額に算入するためには、事前に確定額を届け出る必要がある。
⇨非同族会社が定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(年ボウ又は期間ボウ等)については、届出の必要はなく、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給されている限り、事前確定届出給与に含まれる。ただし、同族会社の場合届出が必要となる。
届出額と支給額が異なる場合
届出額と実際の支給額が異なる場合には、事前に支給額が確定していたものとはいえないことから、事前確定届出給与に該当はしない。なお、それが増額支給であれば増額分だけでなく実際の支給額の全額が損金不算入とされ、減額支給であれば実際に支給した金額が損金不算入とされる。
届出書の提出期限
・通常届出の場合
原則として、役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めをした株主総会等の決議日から1月を経過する日
⇨6/25が株主総会の決議日の場合届出提出期限は7/25となる。
・新たに事前確定給与を定めた場合(臨時改定事由が生じた場合)
次のうちいずれか遅い日
①臨時改定事由が生じた日から1月経過する日
②通常届出の場合の届出書の提出期限
・届出内容を変更する場合
臨時改定事由➡︎臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日
業績悪化改定事由➡︎業績悪化改定事由による定めの内容の変更に関する株主総会等の決議日から1月を経過する日
2.過大な役員報酬等
役員に対して支給する給与(隠蔽又は仮装経理若しくは損金不算入給与の適用があるものを除く)の額のうち不相当に高額な部分の金額は各事業年度の損金の額に算入されない。
(1)退職給与
 役員退職給与の支給額 – 退職給与としての相当額
(2)(1)以外の給与(過大な役員報酬等)
 ①実質基準額
 ②形式基準額
 ③①と②のいずれか多い方
過大な役員報酬等
過大な役員報酬等(退職給与以外の給与)は、実質基準と形式基準のうち損金不算入額が多く計算される方法により計算する。
実質基準
内容
実質基準とは、個々の役員給与の額につき、その役員の職務の内容等に照らし、その役員の職務に対する対価として相当であると認められる相当額を超える部分の金額を過大役員給与の額とする方法をいう。
対象法人等➡︎税務上全ての役員(会社法上の役員及びみなし役員)
計算方法➡︎各個人別に計算した金額の合計額
使用人兼務役員➡︎支給額使用人分給与を含めて計算
実質基準額の計算
*役員給与の支給額 – 職務対価相当額
*定期同額給与+事前確定届出給与+使用人兼務役員の使用人分給与
形式基準額
内容
形式基準とは、定款の規定等により役員給与として支給することができる限度額を定めている場合におけるその支給限度を超える部分の金額を過大役員給与の額とする方法をいう。
対象法人
対象法人➡︎定款の規定等により支給限度額を定めている法人
対象役員➡︎会社法上の役員のみ(みなし役員は対象外)
計算方法➡︎取締役と監査役の区分ごとに計算
使用人兼務役員➡︎支給限度に使用人分が含まれているか否かにより取り扱いが別れる
形式基準額の計算
形式基準額は、次のケースごとに、取締役と監査役に区分して、次の算式により計算する
・限度額に使用人兼務役員の使用人分が含まれている場合
*役員給与の支給額 – 職務対価相当額
*定期同額給与+事前確定届出給与+使用人兼務役員の使用人分給与
・限度額に使用人兼務役員の使用人分が含まれていない場合
*役員給与の支給額 – 職務対価相当額
*定期同額給与+事前確定届出給与+使用人兼務役員の使用人分給与 – (注)
(注)使用人兼務役員の使用人分支給額 or 使用人兼務役員の使用人分相当額の少ない方
3.役員退職給与の計上時期
過大役員退職給与の額
役員に対して支給する退職給与は、原則として損金の額に算入されるが、その役員の業務従事期間等に照らし、その退職給与として不相応に高額な部分の金額は、損金の額に算入されない。
過大役員退職給与 = 役員退職の支給額 – 職務対価相当額
役員退職給与の計上時期
原則として株主総会等の決議日の属する事業年度において認識し、不相応に高額でない限り損金の額に算入される。ただし、特例として損金経理を要件に、実際に支給した日の属する事業年度の損金の額に算入することが認められている。
計算の型
1.損金不算入給与
(1)A氏
(2)B氏
(3)合計
(1)+(2)
⇨退職給与、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与で一定要件を満たすもの、使用人兼務役員の使用人分給与のいずれにも該当しない給与
2.過大役員給与
(1)退職給与
役員退職給与の支給額 – 職務対価相当額
(注)役員が2人以上の場合➡︎各人別に計算した金額の合計額
(2)(1)以外の給与
①実質基準額
役員給与の支給額 – 職務対価相当額
(注)役員が2人以上の場合➡︎各人別に計算した金額の合計額
②形式基準額
(イ)限度額に使用人兼務役員の使用人分が含まれている場合
役員給与の支給額 – 支給限度額
(ロ)限度額に使用人兼務役員の使用人分が含まれていない場合
*定期同額給与+事前確定届出給与+使用人兼務役員の使用人分給与 – (注)
(注)使用人兼務役員の使用人分支給額 or 使用人兼務役員の使用人分相当額の少ない方
③①と②のいずれか多い方
(3)合計
 (1)+(2)
3. 1.+ 2.➡︎役員給与の損金不算入額(加算社外流出)
4.使用人給与の取り扱い
使用人に対しては支給する給与は、原則として損金の額に算入されるが、使用人のうち、経営者の親族等に対して多額の給与を支給することにより、法人税の負担軽減が図られる可能性がある。そのため、特殊関係使用人に対する給与については、損金算入に制限が設けられている。
特殊関係使用人とは、役員と次の特殊関係のある使用人をいう。
・役員の親族
・役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者
・上記以外のもので役員から生計の支援を受けているもの
・上記(2)及び(3)の者と生計を一にするこれらの親族
使用人給与の損金不算入
特殊関係使用人に対して支給する給与の額のうち不相応に高額な部分の金額は、各事業年度の損金の額に算入されない。
計算の型
使用人給与の損金不算入額
使用人給与の支給額 – 職務対価相当額➡︎使用人給与の損金不算入額(加算社外流出)
(注)特殊関係使用人が2人以上の場合➡︎各人別に計算した金額の合計
5.使用人賞与の計上時期
内国法人が支出する給与は、原則としてその債務確定日の属する事業年度の損金の額に算入される。ただし、使用人の賞与に関しては特別な取り扱いが設けられている。
使用人賞与とは、使用人に対する臨時的な給与のうち、次のもの以外のものをいい、使用人兼務役員に対する使用人分賞与を含む。
・退職給与
・他に定期の給与を受けていない者に対し、継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの
・特定譲渡制限付株式等及び特定新株予約権等によるもの
⇨使用人に対する臨時的な給与のうち、退職に起因するもの、年棒半年棒及びストックオプションなどによるものを除いたもの
原則的な損金算入時期
支給日の属する事業年度
支給予定日が到来している未払賞与
支給予定日が到来している未払賞与について(1)の要件を満たす場合の損金算入時期は(2)の通りとなる。
(1)要件
①支給額が通知されていること
②支給予定日又は通知日の属する事業年度に損金経理していること
(2)損金算入時期
支給予定日又は通知日のいずれか遅い日の属する事業年度
翌期首から1月以内に支給する未払賞与
翌期首から1月以内に支給する未払賞与について、(1)の要件を満たす場合の損金算入時期は、(2)の通りとなる。
(1)要件
①支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に通知していること。
②通知額をその通知した全ての使用人に対し、その通知日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内に支払っていること
③通知日の属する事業年度に損金経理していること
(2)損金算入時期
支給額の通知日の属する事業年度

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