【40代USCPA目指せ税理士】法人税法勉強メモ3(課税標準)

税理士
1.課税標準
課税標準とは、税額を計算する基礎となる基準数量をいう。
⇨「数量」という言葉に注意。「金額」ではない。税金の中には酒税など金額以外のものに対しても課されるものもあるため。
内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税課税標準は、各事業年度の所得の金額とする。(法21)。
⇨重要な条文。つまり 法人税額=各事業年度の所得の金額 x 税率となる。
法人税は、課税方式として「事業年度単位課税」を採用している
⇨企業会計と同様に、期間を区切って計算するということ。
内国法人の各事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金の額からその事業年度の損金の額を控除した金額とする(法22①)
⇨重要な条文。益金から損金を控除した金額(純額)が所得の金額になるが考え方としては益金、損金それぞれ総額で考える。以下の例題を頭に入れておく。
(例題)
当社は、当期において土地(帳簿価額20,000,000円)を30,000,000円で譲渡した。
・会計上の仕訳
現金預金 30,000,000円 /土地 20,000,000円
               土地売却益 10,000,000円→純額
・税務上の仕訳
現金預金 30,000,000円 /土地譲渡収入(益金)30,000,000円→総額
土地譲渡原価(損金) 20,000,000円 /土地 20,000,000円
⇨上記の通り、会計上でも税務上でも結果としての利益の額と所得の金額は一致する。しかし、税務上はそれぞれ両建てで認識することになる。このように考えておかないと後々、資産の無償提供が理解できなくなる。
2.益金の額
・益金の額(法22②)
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次の取引に係るその事業年度の収益の額とする
⇨この条文を見ると益金=収益と読み取れるが、「別段の定め」が会計と税務のズレでありこの範囲が割と広い。言い換えるとこのズレの部分が法人税法の試験の対象となる。
・取引の例示
①資産の販売
②有償による資産の譲渡又は役務の提供
③無償による資産の譲渡又は役務の提供
④無償による資産の譲受け
⑤その他の取引で資本取引以外のもの
⇨③が分かりづらい。会計的な考えだとなぜ法人税が課されるのか理解できない。下記③参照。
・具体例
①資産の販売
当社は当期において、A社に対し商品を10,000,000円で販売した。
税務上の仕訳
売掛金 10,000,000円 /売上(益金) 10,000,000円
②有償による資産の譲渡又は役務の提供
当社は当期において、B社に対し土地(帳簿価額20,000,000円)を30,000,000円で譲渡した。
税務上の仕訳
現金預金 30,000,000円 /土地譲渡収入(益金)30,000,000円
土地譲渡原価(損金) 20,000,000円 /土地 20,000,000円
⇨譲渡には収用、交換、出資、代物弁済(債務者が債権者の承諾を得て、約定されていた弁済の手段に代えて他の手段によって弁済することをいう)を含む
③無償による資産の譲渡又は役務の提供
当社は当期において、C社に対し土地(帳簿価額10,000,000円)を贈与した。なお、贈与した土地の時価は30,000,000円であった。
税務上の仕訳(1)
現金預金 30,000,000円 /土地譲渡収入(益金)30,000,000円
土地譲渡原価(損金) 10,000,000円 /土地 10,000,000円
⇨まず、土地を時価で譲渡したものと考える(②と同じ)
税務上の仕訳(2)
寄附金 30,000,000円(損金) /現金預金 30,000,000円
※寄附金は別段の定めにより、損金算入に制限あり
⇨続いて現金預金を贈与したものと考える
⇨ここでのポイントは土地譲渡収入の額を認識すること(=土地譲渡原価と相殺し純額としない)で、寄附金の額を認識することにある。(1)と(2)で現金預金を消してみると寄附金 30,000,000円 / 土地譲渡収入 30,000,000円と整理できる。寄附金の額は別段の定めにより損金算入に制限があるので会計上と税務上では差異が生まれる=適正に課税される。仮に譲渡収入と寄附金を認識しなければ、無償贈与すればするほど土地譲渡原価の分だけ税金が安くなることになる。このように理解する。
④無償により資産の譲受け
当社は当期において、X社から土地(時価50,000,000円)を無償で譲り受けた。
税務上の仕訳
土地 50,000,000円 /受贈益(益金) 50,000,000円
⇨企業会計では贈与を受けたものの性格によっては資本剰余金とすることも考えられるが、税務上は課税の公平を図る観点から益金とする。
3.損金の額
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次の額とする。(法22③)
(1)その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
(2)(1)の他、その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務の確定していないものを除く。)の額
(3)その事業年度の損失の額で資本取引以外の取引に係るもの
⇨「損金に算入すべき」の「すべき」に注意。原則を表す。「別段の定め」が会計と税務のズレでありこの範囲が割と広い。言い換えるとこのズレの部分が法人税法の試験の対象となる。「資本等取引」とは増資や減資などの所得を構成しない取引をいう。
・原価の額
当社は当期において、B社に対し土地(帳簿価額20,000,000円)を30,000,000円で譲渡した。
税務上の仕訳
現金預金 30,000,000円 /土地譲渡収入(益金)30,000,000円
土地譲渡原価(損金) 20,000,000円 /土地 20,000,000円
⇨原価の額は会計上の費用収益対応の原則に基づいて認識される。費用の認識とは異なり債務確定は要件ではない。
・費用の額
当社は当期においてZ社に対して器具備品の修繕を発注している。当期末において修繕は完了している。なお、請求書によると総額8,000,000円とされているが、当期末時点で未払である。
税務上の仕訳
修繕費(損金) 8,000,000円 /未払金 8,000,000円
⇨課税の公平を図る観点から、これらの費用を損金の額に算入するためには期末までに債務が確定することが要求されている。従って、償却費を除き、費用の見越計上及び見積計上(引当金の計上)は原則として認められない。
・損失の額
当期において発生した火災により、当社の工場建物が全焼した。消失直前の帳簿価額は35,000,000円であった。
税務上の仕訳
火災損失(損金) 35,000,000円 /工場建物 35,000,000円
理論 各事業年度の所得の金額の計算の通則
1.課税標準(法21)
内国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得の金額とする。
⇨末尾に「金額」を付すのを忘れない。課税標準は基準数量を言うためその単位を付ける。
2.各事業年度の所得の金額(法22①)
内国法人の事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金の額からその事業年度の損金の額を控除した金額とする。
⇨「各」と「その」の書き間違え注意。まず各は期間の計算であることを表す。そしてそれを同様の期間の益金とい損金であるということを示すために指示語で受けている。
3.益金の額(法22②)
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係るその事業年度の収益の額とする。
⇨「すべき」とするところを「する」としない。ここでは原則を規定している。つまり例外があるということ。
4.損金の額(法22③)
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次の額とする。
(1)その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
(2)(1)の他、その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務の確定していないものを除く。)の額
(3)その事業年度の損失の額で資本取引以外の取引に係るもの
⇨「損金に算入すべき」の「すべき」に注意。原則を表す。「別段の定め」が会計と税務のズレでありこの範囲が割と広い。言い換えるとこのズレの部分が法人税法の試験の対象となる。「資本等取引」とは増資や減資などの所得を構成しない取引をいう。
5.公正処理基準(法24④)
3.の収益の額及び4.の原価、費用、損失の額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。
⇨法人税額の計算は会計のルールに従って計算された最終値である当期純利益を始点として計算すると理解する。
6.資本取引等の意義
法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡しをいう。
⇨課税所得を構成しない種類の取引。所得に含まれないものは法人税の計算上除かれる。
4.企業利益と課税所得との関係
確定決算主義
法人税法では、「法人はその確定した決算に基づいて確定申告書を提出しなければならない。」と規定している(法74)。
⇨株主総会の承認をうけた決算を基礎とすることが、最も信頼性があり、かつ法的にも安定しているため。
所得金額の計算
各事業年度の所得に対する法人税の課税標準である所得金額は、税法が全て独自に計算するのではなく、法人の確定した決算(株主総会の承認を受けた決算)に基づく損益計算書に計上された当期純利益を出発点として、これに税法独自の調整を加えて算出する。
益金の額=収益の額±別段の定め(特例)
損金の額=費用等の額±別段の定め(特例)
所得金額=当期純利益±別段の定め(特例)→別表四で計算
益金算入項目…収益の額ではないが、益金の額となるもの(加算調整)
益金不算入項目…収益の額だが、益金の額とならないもの(減算調整)
損金不算入項目…費用の額だが、損金の額とならないもの(加算調整)
損金算入項目…費用の額ではないが、損金の額となるもの(減算調整)

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