【40代USCPA目指せ税理士】法人税法勉強メモ7(繰延資産)

税理士
1.法人税における繰延資産とその体系
法人税法においても、企業会計と同様に、法人が支出する費用でその支出の効果が将来に及ぶものは一時の損金とはされず、繰延資産としてその支出の効果の及び期間にわたって期間配分すべきこととされている。しかし、繰延資産の償却も減価償却と同様に法人の内部計算であるため、繰延資産の範囲や償却費の損金算入について規定を設け課税の公平性を図っている。
法人税法上の繰延資産 = 企業会計上の繰延資産 + 税法固有の繰延資産
2.繰延資産の意義
法人が支出する費用のうち支出の効果が支出日以後1年以上に及ぶもので一定のものをいう。ただし、資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用は除く
⇨資産の取得に要した金額とされるべき費用は支出の効果が将来に及ぶが、資産の取得価額を構成する支出であり、繰延資産には該当しない。前払費用は契約に基づいて期間の経過に伴って費用化されるもの。
繰延資産の範囲
企業会計上の繰延資産
創立費…発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税そのほかの法人の設立のために支出する費用をいう。
開業費…法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。
開発費…新技術若しくは新経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。
株式交付費…株券等の印刷費用、資本金の増加の登記についての特許免許税その他自己の株式(出資含)の交付のために支出する費用をいう。
社債等発行費…社債券等の印刷費その他の債券(新株予約権含む)のために支出する費用をいう。
税法固有の繰延資産
・自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
・資産を賃借等するために支出する権利金、立退料その他の費用
・役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
・広告宣伝用資産を贈与したことにより生ずる費用
・上記の他、自己が便益を受けるために支出する費用
3.償却費の取り扱い
各事業年度終了時の繰延資産につきその償却費としてその事業年度の損金の額に算入する金額は、その事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度額に達するまでの金額とされている。
・償却超過額が生じる場合
会社計上償却費の額 200円
償却限度額 150円
200 – 150 = 50円(別表四・加算留保)
・償却不足が生じる場合
280 – 300 = △20 → 0(切捨て)
計算の型
(1)償却限度額
(2)償却超過額
 
  会社計上償却額 – 償却限度額 = ➡︎ ①+の場合 繰延資産償却超過額(加算留保)
                   ②△の場合 繰延資産償却不足額(切捨て)
償却超過額として損金経理をした金額
繰越償却超過額(前期以前に生じた償却超過額)は、当期に償却費として損金経理をした金額に含まれる。
⇨減価償却と全く同じ論点
      会社計上償却費   償却限度額
前期        300円     280円
当期        250円     260円
前期
会社計上償却費 300 – 償却限度額 280 = 償却超過額 20→別表四加算
当期
会社計上償却費 250 – 償却限度額 260円 = 償却超過額 △10
                                                           10円<20円 ∴10円(認容)→別表四減算
計算の型
(1)償却限度額
(2)償却超過額
  会社計上償却費 – 償却限度額
   = +の場合 繰延資産償却超過額(加算留保)
   =△の場合 償却不足額 or 繰越償却限度額のいずれか少ない方⇨繰延資産償却超過額認容(減算留保)
4.償却限度額の計算
法人税上の繰延資産
・企業会計上の繰延資産➡︎任意償却
⇨企業会計上の繰延資産については、企業会計において早期に償却することが要求されているため、法人税法においては任意に償却することを認めている。任意償却の繰延資産については、繰延資産の額のうち、まだ損金の額に算入されていない額を償却限度額とする。
・税法固有の繰延資産
繰延資産の額x当期の月数/支出の効果が及ぶ期間の日数(償却期間の月数)
5.繰延資産の額と償却期間
原則
(1)繰延資産の額
 原則として繰延資産に係る支出額による
(2)償却期間
 繰延資産の区分に応じて下記の通り
 ①固定資産を利用するための支出
 耐用年数 x 7/10(又は4/10)
 ②上記以外
 5年 
・公共施設負担金
金銭
-負担者専用➡︎耐用年数 x 7/10
-その他(一般人も使う)➡︎耐用年数 x 4/10
道路用地又は舗装道路の提供
-負担者専用➡︎15年 x 7/10(譲渡前の帳簿価額)
-その他➡︎15年 x 4/10(譲渡前の帳簿価額)
⇨時価ではなく帳簿価額であることに注意
・共同施設負担金
-負担者・構成員の共同の用共同展示場共同宿泊所)➡︎耐用年数 x 7/10
-協会等の本来の用(協会等の会館建設負担金)➡︎耐用年数 x 7/10 or 10年のうち短い年数
⇨覚えにくい。会館10年、会館10年、快感10年、快感10年…と唱えるか
負担者と一般大衆の共同の用(アーケード、日除け、すずらん灯など)➡︎耐用年数 or 5年のうち短い年数
⇨覚えにくい。上記原則の通り5年だがそれより耐用年数が短い場合、納税者に有利な早期償却を認めているということか。
・借家権利金
-新築で権利金が建設費の大部分に相当➡︎耐用年数 x 7/10
-借家権として転売可能(このケースはほぼない)➡︎見積残存対応年数 x 7/10
-上記以外➡︎5年(賃借期間が5年未満で契約更新時に再び権利金を支払う場合にはその期間)
仲介手数料は繰延資産に含めないことができる
・電子計算機等の賃借に伴う付随費用
-引取運賃、据付費、関税、運送保険料等➡︎耐用年数 x 7/10(賃借期間を超える時は賃借期間)
・役務提供を受けるための権利金
-ノウハウの頭金等➡︎5年(有効期限が5年未満で契約更新時に再び権利金等を支払う場合にはその有効期間)
・広告宣伝用資産の贈与費用
-広告宣伝用資産の贈与費用➡︎耐用年数 x 7/10 or 5年のうち短い方
(看板、ネオンサイン、陳列だな、自動車等)
⇨広告宣伝用資産を低額譲渡した場合の繰延資産の額は譲渡資産の取得価額から譲渡価額を控除した金額となる
・その他
-同業者団体の加入金➡︎5年
-出版権の設定の対価➡︎存続期間(存続期間の定めがない場合は3年)
-公共下水道受益者負担金➡︎6年
6.償却の開始時期等
償却の開始時期
繰延資産の償却は、原則として支出日から開始する。ただし、固定資産を利用するための繰延資産であり、かつ、支出時においてその固定資産の建設等に着手されていないものは、その建設等に着手した時から償却を開始する。
⇨支出日と建設着手日のいずれか遅い日から償却を開始
対象した資産が滅失等した場合
繰延資産とされた費用の支出の対象となった固定資産の滅失又は契約の解約等があった場合には、その滅失又は解約等があった事業年度においてその繰延資産の未償却残額を損金の額に算入する。この取り扱いは強制されるものである。
少額の繰延資産
支出額が20万円未満のものにつき、その支出日の属する事業年度において損金経理をした時は、その金額は損金の額に算入される。ただし、損金経理が必要される。
簡易な施設の負担金
簡易な施設で主として一般大衆の便益に供されるもののために充てられる負担金は、その支出日の属する事業年度の損金の額に算入される。簡易舗装、街頭、がんぎ等が該当する。20万円未満かどうかは問わない。
理論 繰延資産
1.繰延資産の意義
法人が支出する費用のうち支出の効果が支出日以後1年以上に及ぶもので次のものをいう。ただし、資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。
(1)創立費
(2)開業費
(3)開発費
(4)株式交付費
(5)社債等発行費
(6)(1)から(5)までのほか次の費用
 ①自己が便益を受ける公共施設又は共同施設の設置又は改良のために支出する費用
 ②資産を賃借し又は使用するため支出する権利金
 ③役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
 ④広告宣伝用資産を贈与したことにより生ずる費用
 ⑤上記のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
2.償却費の取り扱い
(1)内容(法32①⑥)⭐︎
内国法人の各事業年度終了時の繰延資産につきその償却費としてその事業年度の損金の額に算入する金額は、その事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度に達するまでの金額とする。
(注)償却費として損金経理をした金額には、繰越償却超過額を含む。
(2)帳簿価額(令65)
償却超過額がある場合には、その繰延資産の帳簿価額はその償却超過額の減額がされなかったものとみなす。
(3)明細書の添付(令67)
償却費として損金経理をした金額がある場合には、償却限度額その他償却費に関する明細書を確定申告書に添付しなければならない。
3.償却限度額(法64①)
(1)任意償却の繰延資産
 ①範囲
 1.(1)から(5)までの繰延資産
 ②償却限度額
 繰延資産の額 – 既にした償却額(損金算入額)
(2)均等償却を行う繰延資産
 ①範囲
 1.(6)の繰延資産
 ②償却限度額
 繰延資産の額 x その事業年度の月数(注)/ 支出の効果の及ぶ期間の月数
 (注)支出事業年度は、支出日からその事業年度終了の日までの月数
4.少額の繰延資産(令134)⭐︎
均等償却を行う繰延資産となる費用を支出する場合において、その支出額が20万円未満のものにつき、その支出日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その経理した金額は、その事業年度の損金の額に算入する。

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