【40代USCPA目指せ税理士】法人税法勉強メモ9(交際費等の損金不算入)

税理士
1.概要
法人税法上の交際費等には取引先の歓心を買うことによって親睦を深めたり、取引をスムーズに進めるためにする支出が広く含まれる。交際費等に該当するか否かは、経理上の勘定科目等に関わらず、その実質的な内容で区分することになるため、税務上は、次のような一般的な意味での交際費より広い範囲を規制の対象としている。
・費目を問わない
法人がどのような勘定科目で処理しているかなどは関係ない。
・事業関係者に対する支出
支出の相手方は、得意先、仕入先その他事業に関係のある者等とされており、社内や社外を問わず事業関係者に対する支出は全て含まれる。
・接待行為のための支出
接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものを指しており、接待行為の形態は飲食接待などに限らない
⇨交際費等の額のうち損金算入限度額を超える金額が損金不算入とされることになる
制度の趣旨
交際費の支出は、経済取引を円滑に推進するためのものであり、事業遂行上の経費に該当し、本来は損金生を有するものである。しかし、無駄遣いの節約により資本充実を図るため健全な取引慣行の推進を図るためなどの政策的な見地から、法人が支出した交際費の損金算入には一定の制限が加えられている。
取り扱い
法人が支出する交際費等の額(期末資本金の額が100億円以下である法人については、その交際費等の額のうち損金算入限度額を超える部分の金額)は、その事業年度の損金の額に算入しないこととする。
⇨期末資本金の額が100億円超の法人は、支出交際費等の額の金額が損金不算入となる
損金算入限度額
(1)中小法人以外
 中小法人以外の法人の損金算入限度額は、接待飲食費の額の50%とされている
(2)中小法人
 中小法人の損金算入限度額は、①接待交際費の額の50%相当額と②定額控除限度額(800万円x当期の月数/12)のいずれか多い方(法人にとって有利な方)を選択することが認められている。
⇨中小法人とは、期末資本金1億円以下の法人のうち、大法人(資本金5億円以上の法人)による完全支配関係(100%の支配関係)がない法人を指す。飲食費のうち、一人当りの支出金額が5,000円を超えるもの。
損金不算入額
(1)中小法人以外
計算の型
(1)支出交際費等
 ①支出交際費等の額
 ②①のうち接待飲食費
(2)損金算入限度額
 (1)② x 50%
(3)損金不算入額
 (1)① – (2) = xxx→交際費等の損金不算入額(加算社外流出)
(2)中小法人
計算の型
(1)支出交際費等
 ①支出交際費等の額
 ②①のうち接待飲食費
(2)損金算入限度額
 ①接待飲食費基準
 (1)② x 50%
 ②定額控除限度額
  
  支出交際費等の額(1)①と年800万円のいずれか少ない方
 ③①と②のいずれか多い方
(3)損金不算入額
 (1)① – (2)③ = 交際費等の損金不算入額(加算社外流出)
2.交際費等とは
交際費に該当するもの
料亭・クラブ等での接待費用
旅行・観劇等への招待費用
中元・歳暮等の贈答費用
慶弔・渦福費
ゴルフ接待費用等
⇨得意先、仕入れ先等社外の者に対する接待、供応等に要した費用で広告宣伝費、福利厚生費、給与等の他の費用に該当しない全てのものが交際費等に該当する
交際費等から除かれる費用
福利厚生費用‥従業員の慰安のための運動会、演芸会、旅行等の費用
飲食費等‥飲食費で、一人当たりの支出金額が5,000円以下のもの(少額飲食費)
広告宣伝費‥当社の社名、製品名入りのカレンダー、手帳、扇子等の贈答費用
会議費‥会議に関連して支出した茶菓子、弁当等
取材費‥出版物や放送番組の取材の費用
飲食費
 飲食費
  社内飲食費‥実体に応じて区分
  上記以外
   一人5,000円以下‥少額飲食費‥交際費に含めない
   一人5,000円超‥接待飲食費‥損金限度額の計算へ
交際費等の支出の相手方
当社、役員、従業員、卸業者、小売業者
交際費等の支出方法
(1)二以上の法人が共同して接待等をした場合‥分担額
(2)同業者団体等が接待等をした場合‥負担額
(3)専ら懇親のために会合を催すための団体に対して、会費を支出した場合‥会費の額
3.交際費等の範囲
交際費等の損金不算入額の計算ポイントは、法人の支出を交際費等に該当するものと該当しないものとは正確に区分する必要がある。
⇨集計上、下記の区分が大変重要
・売上割戻し等
一定の基準によるもの
 金銭の交付‥交際費等に該当しない(損金算入)
 事業用資産の交付‥交際費等に該当しない(損金算入)
 少額物品(3,000円以下)‥交際費等に該当しない(損金算入)
 上記以外の物品‥交際費等に該当する
→一定の基準とは売上高又は売掛金の回収高に比例、売上高の一定ごと等
上記以外‥交際費等に該当する
・景品
一般消費者に対するもの‥交際費等に該当しない(損金算入)
得意先に対するもの
 少額物品の交付‥交際費等に該当しない(損金算入)
 上記以外の物品の交付‥交際費等に該当する ★
・販売奨励金
金銭の交付
 旅行、観劇への招待費用の負担額‥交際費等に該当する
 上記以外‥交際費等に該当しない(損金算入)
事業用資産の交付‥交際費等に該当しない(損金算入)
・運動費
金銭又は事業用資産の交付‥交際費等に該当しない(損金算入)
上記以外‥交際費等に該当する
・広告宣伝費
不特定多数の者に対して、宣伝効果を意図する費用は広告宣伝費となり、交際費等に該当しない。
一般消費者に対するもの‥交際費等に該当しない(損金算入)
抽選により金品を交付するための費用/抽選により旅行、観劇等に招待する費用/景品費/一般の工場見学者等に試飲、試食をさせる費用/自社製品等のモニター費用
得意先に対するもの‥交際費等に該当しない(損金算入)
見本品・試用品の供与に通常要する費用/新製品等の展示会等に招待する場合等の交通費、食事代、宿泊料/自社製品等に関する商品知識の普及等のための工場等を見学させる場合の交通費、食事代、宿泊費
・福利厚生費
従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のための費用‥交際費に該当しない(損金算入)
慶弔・渦福費
 従業員又はその親族に対するもの‥交際費等に該当しない(損金算入)
 得意先等の社外の者に対するもの‥交際費に該当する
創立記念、新社屋落成式等の費用
 得意先等を招待する宴会費、交通費、記念品代等の費用‥交際費に該当する
 従業員に一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用‥交際費等に該当しない(損金算入)
 式典の祭事費用‥交際費等に該当しない(損金算入)
・給与
常時給与される昼食等の費用/自社製品等を原価以下で販売した場合の原価額と対価の額との差額/機密費等の名義で支給した金額のうち、法人の業務のために試用したことが明らかでないもの‥交際費等に該当しない(損金算入)
・会議費
通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等を供与するための費用‥交際費等に該当しない(損金算入)
旅行と併せて会議を行った場合
会議の実態を備えている場合の会議費用‥交際費等に該当しない(損金算入)
会議の実態を備えていない場合の会議費用‥交際費に該当する
旅行等に招待した費用‥交際費に該当する
4.交際費の計上時期
交際費等の損金算入額の計算の対象となる交際費等の認識は、接待等の行為のあった時点で行われる。
経理処理と税務調整
・未払計上する場合
交際費等について、接待行為をした段階で未払いであるため何ら経理していない場合であっても、交際費等は接待等の行為があった事業年度において認識することになる。
・仮払経理の場合
交際費等について仮払金として経理した場合には、会社の経理処理上は費用として計上されていないが、既に接待行為等があるため、その接待行為があった事業年度に認識することとなる。
・前払計上する場合
交際費等について、接待行為をする前の段階で予約金を支払い、費用計上した場合であっても、交際費等は接待等の行為があった事業年度において認識する。
理論 交際費等の損金不算入
1.交際費等の意義
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入れ先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行為のために支出するもの(次のいずれかに該当するものを除く。)をいい、接待飲食費とは、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。以下、「飲食費」という。)であって、その旨につき一定の方法により明らかにされているものを言う。
(1)専ら従業員の慰安のために行われる運動会等のために通常要する費用
(2)飲食費で、参加者一人当たりの支出金額が5千円以下のもの(一定の書類を保存している場合に限る。)
(3)(1)(2)の他、カレンダー等の贈答費用、会議費及び取材費等で通常要する費用
2.損金不算入
法人が各事業年度において支出する交際費等の額(期末資本金の額が100億円以下である法人については、その交際費等の額のうち接待飲食費の額の50%相当額を超える部分の金額)は、その事業年度の損金の額に算入しない。
3.中小法人の特例
(1)内容
 2.の場合において、法人のうちその事業年度終了の日における資本金の額が1億円以下であるもの(普通法人のうち大法人による完全支配関係があるものを除く。)については、次の区分に応じそれぞれの金額を持って2.の超える部分の金額とすることができる。
①交際費等の額が定額控除限度額以下である場合‥零
②交際費等の額が定額控除限度額を超える場合‥その部分を超える部分の金額
(注)定額控除限度額とは次の金額をいう。
 800万円 x その事業年度の月数/12
(2)申告条件
 (1)の規定は、確定申告書、修正申告書又は更生請求書に定額控除限度額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り、適用する。

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